エビデンスに基づく情報の意義や、研究の必要性

 SAJが提供するまなびのプログラムは、「ステップファミリーのためのスマート・ステップス(Smart Steps)」をベースに、日本のステップファミリー当事者向けにオンラインに対応させて再編したものです。「Smart Steps」は、米国アラバマ州オーバーン大学のフランチェスカ・アドラー=ベイダー教授が開発した家族生活教育プログラムです。

米国の各地で2,500名以上の専門家がこのプログラムの研修を受講し、 プログラムの発行部数は5,000部を超えています(SAJ・野沢慎司編・監訳『家族支援家のためのステップファミリー国際セミナー2014報告書」p.80)。ステップファミリーのおとなと子どもの健康発達に効果をあげていることがわかっています。

 このプログラムは、ステップファミリーを対象としたさまざまな研究知見にもとづいてつくられています。「研究知見」とは、心理学や社会学などの各学術学会が発行する学術誌に掲載された研究論文に書かれている内容のことを指します。「Smart Steps」は全6章で構成されていますが、各章の最後に引用論文のリストがついています。エビデンスにもとづいてつくられた、ステップファミリー当事者向けの家族生活教育プログラムです。

 このようなプログラムには客観的なエビデンスが求められます。もちろん、当事者の経験談から気づきを得て、お互いに学びあうこともとても大切です。SAJではそのようなセルフヘルプの良さを体験できるサポートグループもあります。それに加えて、個別の経験を超えて、ステップファミリーに共通する関係構築の課題や葛藤への対処法を学ぶ必要もあります。ある場面でどのように対応すればよいのかという方法や手段だけでなく、なぜそのような対応をするとうまくいくのか、反対に、なぜうまくいかないのか、といった理由や背景要因を知ることで、さらにステップファミリーという家族への理解が深まっていくでしょう。

 SAJでは、2007年から「Smart Steps」日本版を試験的に実施してきました。また、2017年には、その様子を開発者のアドラー=ベイダー教授にスーパーバイズしていただく機会もありました。日本の心理学や社会学の研究者からも協力と助言を得て、このたびオンラインでのプログラム提供に至っています。今後も、効果的な家族生活教育プログラムを実施するために、日本でのエビデンスを蓄積していきたいと思っています。